東京の楽園、新島とソフトボード

いつもながら東京だとは思えない豊かな天然色が目に眩しい海岸に、パワフルかつ良いシェイプの波がブレイクしていく。さすがは日本が誇り、世界に知られるサーフスポット、新島だ。そして今回、高速船利用なら東京・竹芝から3時間で着く場所ながら島時間を堪能できるこの島へふたりのプロサーファーが訪れた。手にするのは、近年話題になっているスポンジ製のサーフボード。果たしてソフトボードだけで新島の波を満喫できるのか。さらにキャンプサイト滞在を選んだ、夏模様たっぷりの旅が始まる。

新島に持参したソフトボードについて詳しくはコチラ

新島ブルーに包まれて、身体も一気に軽くなる

幼い頃の楽しい夏の思い出は、立派な大人になった今でも心を支配する。1日中遊びたい。きれいな海でクタクタになるまでサーフィンしたい。そんな夏の欲望に包まれるとき、脳裏に浮かぶのはサーフアイランドという名の楽園だ。東京の竹芝桟橋から高速船で3時間弱。調布空港からは空路で40分ほどで着ける新島は、多忙を極める都会のサーファーにも最適なデスティネーション。上質なバレルも出現するこの場所は、日本が誇るサーフアイランドとして、古くからサーファーたちに愛されてきた。のんびりとした島の空気に包まれて、ただひたすら海と向き合う日々。シンプルだけれど、この上なく贅沢な時間に、忘れかけていた本能さえも刺激されていく。

「ああ、久しぶり。やっぱり今日もきれいだ」と、嬉しそうに笑うのは、今回の旅人であるプロサーファーの大澤伸幸。島の民宿でバイトをしながらサーフィンの腕を磨いてきた彼にとって、この場所は第2のホームのような存在だ。 もうひとりの旅人は、ウェットスーツブランドのオーナーでフリーサーファーの脇祐史。茅ヶ崎を地元にするふたりで、心ゆくまでサーフセッションを楽しむ。しかも持参したのはソフトボード5本だけ。いつもと勝手の違うトリップに、期待と戸惑いがまざったような様子を見せていた。新島は羽伏浦、間々下、淡井浦など、さまざまなサーフポイントがあるが、今回は約7㎞も続く羽伏浦海岸沿いにブレイクする波を求めて、シークレットポイントのさらに奥へと移動。4WDでしか向かえないデコボコの道をひた走り、毎日波乗りへと向かった。途中で見る景色は幻想的で、自然が力強い。何度もその景色を心に刻みながら向かったビーチもまた驚くほど白く、太陽が一段と眩しい。ブレイクはもちろん、最高だ。

 

混雑した海とは無縁の新島。到着早々目にしたこの風景と圧倒的な青の美しさに、旅のメンバーも一気にテンションが上がる。

透き通った海にパドルアウトする瞬間、心地良い高揚感に包まれる。暑さを吹き飛ばす清涼感も、夏のサーフィンの醍醐味だ。ソフトボードなら、さらに気分がリラックスする。

普段からさまざまなサーフボードを乗りこなす脇祐史は、初めてのソフトボードでも華麗なライディングを披露。

車を少し走らせるだけで、ビーチとはまた違った豊かな自然の風景を楽しめる。野性的な光景も新島の魅力のひとつ。

ソフトボード ライディングも持ち運びも快適すぎる!

サーフィンスクールで使用されたりと、以前は初心者向けのイメージが強かったソフトボードだが、この数年で状況はかなり変わってきた。スタイルを追求するこだわりサーファーからプロまでもがソフトボードを所有し、休日を楽しんでいるとの話も耳にする。そんなソフトボード人気もあってか、各ブランドからは多彩なモデルが登場。長さやデザインが豊富な上、機能面でもレベルアップを図ったソフトボードの数々は、今やメインボードとして使用できるほどのクオリティだという。

今回、新島の旅にソフトボードを持参したのは、「実際、ソフトボードだけで旅を楽しめるのか?」という疑問を解決する意味もあったが、結果からいうとそれは愚問だった。テイクオフが速く、どんな波もイージーに乗れるソフトボードは、気楽なトリップの相棒としては申し分のない存在。ホレた波で知られる新島でも、多くの波をキャッチ。ご覧の通りのライディングを楽しめる。ソフトボード経験の少ない大澤伸幸と脇祐史も、「進化をかなり感じました」と驚きを見せるほどだった。

ちなみに持参した5本のボードの長さは5フィート台から8フィート台までとさまざま。ロングボード以上の浮力を感じさせる8フィート台のファンボードは、パドルに自信のない人でも余裕の持てるテイクオフが自慢だし、ショートボードではハイスペックボードさながらのクイックなターンも可能。何よりも多少の衝撃でも壊れる心配のないソフトボードは、移動時のストレスが少なく、まさに旅仕様なのだ。

 

形状を見ながらライディングを想像。それぞれの特徴を把握できれば、ソフトボードでのサーフがもっと楽しくなる。

軽量でレールの分厚いソフトボードでも、勢いよくスプレーが飛ぶ。

スポンジ素材のハンドプレーンも登場。サーフボードでテイクオフし、そのパワーでライドオン! 遊び方の多様性は自分次第。

自然の中に身を委ねるキャンスタイルで、アフターサーフも島時間を満喫!

非日常のアウトドアアクティビティとして多くの人に定着したキャンプ。だがサーファーにとってのキャンプは、より良い波に乗るための手段といった向きとなる。もちろん、起きてすぐに波チェックができるのがサーフキャンプ最大の魅力。とはいえ、協力してテントを組み立て、焚き火を囲んで語り合うのも、海とは違う感動を得られて楽しい。新島には旅慣れた人が利用するキャンプ場があり、簡単な受付を済ますだけで無料宿泊ができる。ビーチフロントではないが、羽伏浦海岸までは車で10分程度だし、水シャワーも完備され、炊事場には利用者が残した調理器具が充分すぎるほどあって、テントと寝袋さえ用意すれば、すぐにでもキャンプが始められる。オートキャンプ場ではないので、駐車場から歩いてテント場まで向かおう。

3泊4日の今回の旅では、近くのスーパーで買い出しをし、夕暮れ前に食事の支度をスタート。みんなで夕食をとりながらも、キャンプ場では自分たちのペースで過ごせるから、各々がサーフィンで疲れた身体を休ませ、自分なりの時間を過ごした。まさに自由だけが存在する特別な休日。そんな気分に浸ってふと見上げると、そこには大きな空が広がっていた。

サーフィン以外にも楽しい!東京が誇る新島の魅力

美しい海と真っ白なビーチ、昔と変わらない田舎の風景、心優しい島の人々。都心から数時間とは思えないほど、雄大な自然が広がる新島は、情報過多の日常から距離を置き、心からリラックスするには最高の場所だ。しかも幾度となくサーフィンの国際大会が行われてきたこの島の波質はグローバルレベル。それなのにラインナップにはローカルサーファーが数名しかいないことも多く、混雑とは無縁のサーフィンを楽しむことができる。

真っ白なビーチと絶壁、そして紺碧の海。その圧倒的な存在感にも勝る極上ブレイクは、多くのサーファーを虜にする。
海を望む「湯の浜露天風呂(無料)」は24時間営業。ここから見る夕日は最高。

島の面積は約24㎢、人口はおよそ2500人。車を使えば1時間程度で1周できる小さい島ながら、サーフカルチャーが深く根付いているためサーフギアの現地調達も可能。島の中心街には民宿や飲食店などが集まっているので、アフターサーフも十分楽しる。新島ガラスやモヤイ像、海辺の露天温泉など、ビーチ以外の観光名所は多く、旅人、釣り人たち来島者が後を絶たない。島の名物が充実しているので、お土産選びにも満足できるはずだ。ちなみに、波はタイドに大きく左右されるので、海へ向かうときは地元サーファーに相談するのがベター。ひとたびスウェルが入るとエキスパート向けのバレルが姿を現わすことから、常に波の状況を見て自分の技量と相談しよう。

 

新島へのアクセス

東京・竹芝からは、東海汽船運行の高速ジェット船で3 時間弱。ただし、ジェット船にはロングボードが持ち込めないため、今回は東京を23 時に出発し、船内に1泊する大型客船で出発。仕事帰りにも最適な大型客船なら、夜の宴会も楽しい。翌朝7 時30分に新島へ到着するため、時間を有意義に使うこともできる。

 


写真/高橋賢勇 取材・文/菅明美 取材協力/東海汽船 www.tokaikisen.co.jp/