ウォームアップに効果的なピラティス4選(サーフィン前)
筋肉の深層部である体幹、インナーマッスルを中心に身体の各部が鍛えながら、柔軟性を向上してくれるピラティス。当然、筋肉がトーンアップすれば力強いサーフィンが可能になり、柔軟性が高まれば怪我防止にもつながる。サーフィン前にぜひピラティスを取り入れたいところ。そこで今回はピラティスインストラクターとして活躍するプロサーファー、水野 亜彩子さんに“ウォームアップに効果的なピラティス”を4つ教えてもらった。トレーニング用のマット(10mm 以上の厚みが理想)さえあれば、いつでも気軽に行えるので、「サーフィンの調子を上げたい!」と考えている方は、今すぐ取り入れよう!
[サーフィン前①]
お尻と内腿に効く『ペルビックカール』(回数目安:5回)
ピラティスの基本『ペルビックカール』は、背骨を一つずつ動かすエクササイズ。「骨 盤の歪みや姿勢を改善できるほか、特にサーフィンでは身体を反る姿勢が多いので、 海に入る前に固まった背骨をほぐしておくことで腰痛予防にもつながります。背骨(上 半身)の動きに流動性が生まれれば、当然サーフィンのパフォーマンスも向上します し、内腿の筋肉を同時に鍛えられるので波乗り中の踏ん張る力もアップしますよ(水野さん)」
[ペルビックカールのやり方]
(1)仰向けの状態で膝を立て、足・膝は拳一つ分開けた状態でセット
(2)骨盤→腰→背中の順に背骨をマットから持ち上げる
(3)膝と肩が一直線になったら、背中→腰→骨盤の順でマットに下ろす
マットの上で仰向けになり、膝を90度に曲げる。両膝・両足ともに拳一つ分開き、脇を締めて手のひらを下に。腕は体側。この状態で息を吸い、吐きながら「1、2、3」のリズムでお尻を上げていく。膝と肩が一直線になるところまでお尻を持ち上げたら、またそこで息を吸い、吐く呼吸で「1、2、3」のリズムでお尻を下ろしてく。この一連の動きを5回繰り返す。
[ポイント]
上げるときはお尻を丸め、骨盤から背骨を動かしていく
腰から上げるとお尻が下がり、胸が開いてしまうので上げる際はお尻を丸めるように骨盤から上げると◎。膝が開くと内腿に刺激が入らないため、常に足&膝幅は拳一つ分をキープ!
[サーフィン前②]
背骨に効く『バックエクステンション』(回数目安:5回)
うつ伏せになり上半身を起こす、背筋のエクササイズ『バックエクステンション』。「上半身を完全に起こそうとすると腰に負担がかかってしまうため、起こすのは『みぞおち』あたりまででOKです。背骨の上部だけを動かすエクササイズですが、余裕がある人は腕を伸ばし、背骨全部を動かしましょう。脇を締めて腕を伸ばす動作を加えることで、パドル時の二の腕の裏の筋肉を同時に鍛えられます(水野さん)」
[バックエクステンションのやり方]
(1)うつ伏せになり、足は肩幅に。肘を曲げ、顔の横に手をつく
(2)首の骨から背骨を一つずつマットからめくり上げていく
(3)腰の強い人は、さらに上体を起こす
お腹をしっかりと引き締めて、うつ伏せに。吸う呼吸で目線を斜め前、首の骨を動かし、胸、鎖骨を見せるように胸の骨を持ち上げていき、吐く呼吸で胸の骨から一つずつ骨を下ろす。腰の筋肉を使わず、サーフィンと同様、みぞおちから上を開いてあげるのがポイント。胸椎、胸の骨の動きを意識すると◎。
[ポイント]
腰の力は使用せず、胸を開くように状態を起こす
背骨をただ上に持ち上げるのではなく、脊椎を一つずつ順に持ち上げるイメージで状態を 起こすと◎。腰だけを上に浮かせたり、途中でお腹の力が抜けたりしないように注意。
[サーフィン前③]
腹筋と捻転強化に最適な『スパイン・ツイスト・スーパイン』(回数目安:5回)
回旋系の定番エクササイズ『スパイン・ツイスト・スーパイン』。「骨盤周りは安定させた まま、ウエストに効かせるワークアウトになります。膝股関節を 90 度にキープしたまま 両足を左右に旋回させることで、腹斜筋を鍛えられます(水野さん)」
[スパイン・ツイスト・スーパインのやり方]
(1)腕をT字に広げ、両足の膝股関節を90度にセット
(2)腹筋に力を入れ、両足を左右に傾ける
腕をT字に広げ、肩の延長線上に指先がくる位置にセット。膝股関節を90度に持ち上げ、両膝・踵を揃える。このとき、脛と床が平行になる高さに。両肩をしっかり沈めた状態で、吸う呼吸で両足を右側に傾け、吐く呼吸で正面に戻る。これを左右で繰り返す。両膝をくっつけたまま、両肩もマットから上に離れないよう注意して行おう。
[サーフィン前④]
お尻(深層筋)に効く『クラムシェル(90°/90°)』(回数目安:左右20〜30回)
畳んだ脚を開閉する様が貝殻に似ていることから、『クラムシェル』と名付けられたエク ササイズ。「お尻の延長線上に踵がくるクラムシェルがメジャーなんですけど、今回ご紹 介するのは、膝股関節を 90 度にセットしたバージョン。この角度にすることで、お尻の 深層筋(深層外旋六筋)という深い筋肉のスイッチが入り、サーフィンのターン時に骨盤 から動く感覚が味わえたり、膝の怪我予防にもなる、一石二鳥のエクササイズです(水野さん)」
[クラムシェル(90°/90°)のやり方]
(1)横向きに寝ころがり、 膝股関節を90度に曲げる
(2)身体の軸をブレさないよう股関節を軸に膝を開閉
横向きになり、膝股関節を90度に曲げる。下側の腕は頭の下に、上側の手ではマットを押さえる。股関節がぐらぐらと動かないよう身体を固定したら、股関節を軸に膝を開閉する。開け閉めするスピードは「1、2」のリズムで。脚を開く際に息を吐き、閉じるときに息を吸う。お尻の穴を閉める意識で膝を開けば、しっかりと深層部の筋肉に負荷をかけられる。
[ポイント]
股関節の屈曲角で使われる筋肉が変化する
クラムシェルは股関節の屈曲角度によって鍛えられる部位が変わるため、効かせたい部位に合わせて正しい角度で行おう!
・股関節45度屈曲:中臀筋、梨状筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋
・股関節60度屈曲:中臀筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋 ※主に内閉鎖筋
・股関節90度屈曲:中臀筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋 ※主に外閉鎖筋
[PROFILE]
プロサーファー/ピラティスインストラクター
水野 亜彩子さん
みずの・あさこ●1993年、東京都生まれ。2009年、当時の女子プロサーファー最年少記録である15歳でJPSAプロ資格を取得し、同年ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。2011年に高校生でJPSA優勝、その後年間ツアーランキング2位に。日本代表としても世界戦にも4度出場している。24歳で現役を退き、現在はプロサーフィンツアーの解説者や、ピラティスインストラクターとして活躍中。
写真=熊野淳司(STUDIO467) 文=GGGC
[2024年9月号掲載の記事を再構成]