サーフィン後、シャワーを浴びるだけで終わっていないだろうか。楽しいサーフィンを長く続けるためにも、海上がり後のセルフケアが大事。疲労を翌日に持ち越さないためにも、サーフィンで疲れた身体を労り、しっかりとストレッチ(エクササイズ)を行おう。今回はピラティスインストラクターとして活躍するプロサーファー、水野 亜彩子さんに“サーフ後の疲れた身体を癒すピラティス”を4つ教えてもらった。
[サーフィン後①]
胸と背骨に効く『キャットストレッチ』(回数目安:5回)
猫のように背中を丸める『キャットストレッチ』。「背中の筋肉を鍛えながら胸の筋肉のコリをほぐす、背骨と胸を動かすエクササイズです。猫背や肩こりの改善効果があり、汗をかかないでできるため1日の終わりに、お 風呂上がりにする方も多いです。ポイントは、背中を丸めるときは腰から、反らせるときは頭の方から。出っ尻で背中を大きく反らせようとすると、腰まわりの筋肉に負担がかかり、反り腰や腰痛の原因になるので注意!(水野さん)」
[キャットストレッチのやり方]
(1)手のひらと膝をマットにつき、四つん這いの姿勢をとる
(2)背中を丸めるように背骨を一本ずつ動かす
肩の下に手首、股関節の下に膝がくるように四つん這いの状態でセット。首を長くし、息を吸って準備。吐く呼吸で、骨盤の方から背骨を一つずつ動かすように背中を丸めていく。同時に、徐々に目線を下ろしていき、最後はヘソを覗き込むように。背中を丸め切ったら、再び息を吸い、吐く呼吸で 今度は頭→お尻の順に元の位置に戻していく。
[サーフィン後②]
背中と腿ウラに効く『スパインストレッチ』(回数目安:5回)
「スパインストレッチは背骨の長さを出しながら背面をゆっくり丸くすることで、脊柱の柔軟性を高めるエクササイズ。同時に腿裏にも効かせることができるので、サーフィンでよく使う“下半身”のストレッチに有効的です。本来は膝をできるだけ曲げないように行うエクササイズにはなりますが、『曲げないように』と無理をすると、かえって怪我をしてしまうので、体が硬い方は膝が多少曲がってしまってもOKです(水野さん)」
[スパインストレッチのやり方]
(1)つま先は天井に向け、両腕を前に伸ばした状態で座る
(2)背骨を上から動かすよう上体を前方に倒していく
(3)ヘソを覗き込むよう、腕を伸ばすように前傾
長座で座り、脚は腰幅よりも少し広めに開き、つま先は天井に向ける。両腕は、肩の高さにキープ。息を吸い、吐く呼吸で首後ろを長く伸ばしながら、頭を頷き、背骨を上から1本ずつ動かすように前方に倒していく。倒し切ったら息を吸い、再び吐く呼 吸で起き上がる。起き上がるときは、お尻の上の背骨を1本ずつ下から順番に、積み上げるように。
首の後ろを長く伸ばしながら背骨の上部から前傾する
頭から順番に、背骨と背骨の間を広げるようにしながら、前に向かって背中を曲げていくのがポイント。ヘソの位置を高く保ち、お腹の締めを意識して行えると、なおよし。
[サーフィン後③]
体側に効く『サイド・ベンド』(回数目安:左右5回)
背骨の左右差を整えるピラティス『サイド・ベンド』。「サーフィンの旋回の動きにより骨盤と肋骨の間が縮んでしまい、そこが固くなると呼吸もしづらくなるので、今度は側屈という横の動きを取り入れ、体側を伸ばしていきましょう。このとき、しっかりと肘で床を押し上げることで脇が閉まる感覚を養えるので、パドル中の 姿勢が楽になったり、パドルスピードも上がため、サーファーのみまさまにははぜひ取り入れて欲しいです(水野さん)」
[サイド・ベンドのやり方]
(1)横になり、下側の脚の膝股関節を90度に曲げ、肘をマットにつける
(2)上側の腕を扇状に、頭上へ伸ばしていく
(3)体側が十分に伸びる位置まで上の腕を伸ばし切る
横向きになり、下側の腕の肘をマットにつける。下側の脚を膝股関節90 度に曲げ、前に出す。上の脚は伸ばしたまま。このスタートポジションから、息を吸いながら上の腕を扇状に頭上へ伸ばしていく。伸ばす際、マットについた肘でしっかりと床を押す。体側が十分に伸びたら、息を吐きながらスタートポジションに。これを左右、5 回ずつ行う。
[ポイント]
お尻を浮かすとより体側が伸びる!
お尻を浮かすと、より効果的。やり方は、下側の腕を伸ばして手のひらをマットにつき、上体を斜めに倒して横向きに座る。 このとき、下側の脚を後方に少しズラす。お尻を持ち上げると同時に、上側の手を頭上へ。同様に体側を伸ばしていく。
股関節に効く『股関節と体側のストレッチ』(回数目安:左右5回)
「最後は股関節(腸腰筋)周りのストレッチ。厳密に言うとこれはピラティスではないん ですが、ボトムターンや波待ちなど、サーフィンは股関節を駆使するシチュエーションが 多いので、海上がり後のセルフケアが非常に大事になります。ここでご紹介するのは腸 腰筋を伸ばしながら、体側のストレッチも兼ねた動き。体側を伸ばしてあげると、その 手につられて股関節の周りがすごく伸びるので、とても有効的なストレッチになります(水野さん)」
[股関節と体側のストレッチのやり方]
(1)脚を大きく前後に開脚し、体重を前脚に乗せる
(2)左手を右脚につき、左手は弧を描くように頭上へ
(3)体幹を前脚側に回旋しながら、からだを側方へゆっくり倒す
右足を大きく踏み出し、膝を 90 度に曲げたら膝に右手をつく。左足は後方に伸ばし、マットに膝をつけたら体重を前脚側に乗せる。このセットポジションで息をゆっくり吸い、息を吐きながら左手で弧を描くように体側を伸ばしていく。無理のないところまで体側を伸ばしたら、息を吸いながらセットポジションに戻る。これを左右5回ずつ行う。
[PROFILE]
プロサーファー/ピラティスインストラクター
水野 亜彩子さん
みずの・あさこ●1993年、東京都生まれ。2009年、当時の女子プロサーファー最年少記録である15歳でJPSAプロ資格を取得し、同年ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。2011年に高校生でJPSA優勝、その後年間ツアーランキング2位に。日本代表としても世界戦にも4度出場している。24歳で現役を退き、現在はプロサーフィンツアーの解説者や、ピラティスインストラクターとして活躍中。
写真=熊野淳司(STUDIO467) 文=GGGC
[2024年9月号掲載の記事を再構成]