WSL CTワールドチャンピオンが決定!ウィメンズは今年も下剋上が…

Photo by Thiago Diz/World Surf League

たった1日でワールドタイトルを決める「Rip Curl WSL Finals」。世界一のマシンブレイクと評されるカリフォルニア・ロウワー・トレッスルズを舞台に男女ともに5人のサーファーが世界一を目指し戦う。
トップ5はツアーが終わっても最終順位ではなく、この戦いを持って今年のランキングが出揃うことになる。

出場選手は下記の選手たち。上からツアーランキング順で掲載
メンズ
フィリッペ・トレド(ブラジル)
グリフィン・コラピント(アメリカ)
イーサン・ユーイング(オーストラリア)
ジョアオ・チアンカ(ブラジル)
ジャック・ロビンソン(オーストラリア)

ウィメンズ
カリッサ・ムーア(ハワイ)
タイラー・ライト(オーストラリア)
キャロライン・マークス(アメリカ)
モリー・ピックラム(オーストラリア)
ケイトリン・シマーズ(アメリカ)

試合はまず5位の選手と4位の選手が戦い、その勝者が3位と戦う。そしてその勝者が2位と戦い、タイトルマッチに進む。
タイトルマッチは年間ワールドチャンピオンを決める戦いだけに、最大3戦行われ(つまり一度は負けても良い)先に2勝した選手がワールドタイトルを獲得する。

まずマッチ1、ケイトリン・シマーズとモーリー・ピックラムとの戦い。波数も少なく慎重に波を選んだヒートとなりお互い3本づつ波に乗る。そんななかアベレージスコアでまとめたモーリーに対し、ケイトリンが7点と8点代をスコアし勝利を収め次のヒートに繋げた。一方メンズは、怪我の前までは勝負強かったジャック・ロビンソンと昨年とは別人の様にハイスコアをメイクするようになったジョアオ・チアンカの対戦。ヒート序盤はジャックがヒートをリードしたが、8点代をジョアオがスコアし終盤にも7点をスコア、完勝で次のヒートに駒を進めた。

マッチ2はケイトリンとキャロライン・マークスの戦い。こちらは比較的ロースコアの戦いとなったが、鋭いバックハンドアタックで2本揃えスコアメイクしたキャロラインがケイトリンを振り切り次のヒートに進んだ。メンズはジョアオとイーサン・ユーイングとの戦いに。イーサンは最終戦のタヒチで練習中に椎骨骨折し出場が危ぶまれたが懸命のリハビリとトレーニングでこの舞台に間に合わせてきた。このトレッスルズの波にもっともマッチすると言われるイーサンのサーフィン。流れるようなスムーズなラインから強烈なトップアクションやカーヴィングを繰り出す。9ポイントを出すなどジョアオを圧倒しマッチ3へと進出を決めた。

マッチ3ではいよいよタイトルマッチの挑戦者が決まる戦いになる。キャロラインと対戦するのはタイラー・ライト。ここではキャロラインがオンファイヤー。冴わたるバックハンドサーフィンで8ポイント代と9ポイント台のハイスコアを2本揃えタイラーを圧倒しタイトルマッチへと進出を決めた。イーサンと対戦するのはグリフィン・コラピント。このスポットをホームとするローカルヒーローの登場にビーチのボルテージはタイトルマッチを前に最高潮に達し赤一色でビーチを埋め尽くす。しかしこのオーディエンスでもイーサンの勢いを止めることはできなかった。深いボトムターンから力を一気に解放するカーヴィングやリッピングで波を鋭く抉りハイスコアを2本揃えこちらもタイトルマッチへと駒を進めた。

© WSL / Diz

いよいよタイトルマッチ。キャロラインに対するのは昨年悔しい思いをしたカリッサ・ムーア。まずヒート1、オープニングウェイブから8点台をスコアし、カリッサにプレッシャーをかけその後も8点台をスコア。エアーを試みるなど粘るカリッサを振り払いヒート1に勝利した。一方メンズは、イーサンとフィリペ・トレドとの戦いに。フィリペはブラジリアン初の連覇を狙う。ここでは好調のイーサンとフィリペががっぷり四つでぶつかり合う。お互いクオリティの高い最先端のサーフィンをみせるなか鋭いカーヴィングからフルローテーションのエアーを決めたフィリペが9ポイントをスコアするなど17.97対17.23というギリギリの戦いに勝利、ワールドタイトルに向け一歩前進した。

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© WSL / Nolan

© WSL / Miers

迎えたヒート2。ここで敗れれば全てが終わってしまうカリッサは一矢報いたいところ。しかしキャロラインはスタートからバックハンドの2本でスコアをまとめヒートをリード。それに対し、カリッサもカットバックからレイバックを交えしっかりとポイントをメイクするなど反撃したが、好調のキャロラインに一歩及ばず2年連続でワールドタイトルを逃した。キャロラインは21歳にして初のワールドタイトルを獲得。今大会唯一のグーフィーフッターであり、久々のアメリカ本土からのクイーンが誕生した。メンズは先ほどのヒート1と違いスローな展開となるなか、フィリペが積極的に仕掛ける。一方のイーサンは残り9分までノーライド、波をじっくり選ぶ。ヒートのハイスコアをメイクしたものの2本きっちりとまとめたフィリペが2連覇を果たす。イーサンは最後、疲れが出ている様にも見えたが痛みもあったのではないだろうか。世界一綺麗なサーフィンと評されるサーフィンの進化を来年も期待したい。それにしてもフィリペの高速かつ技数も多くエアーからカーヴィング、リッピングまで全てハイレベルにこなせるサーファーだけに、ビッグウェイブとチューブ以外では来年も覇権が続きそうだ。またウィメンズでは昨年はツアーの年間ランキング5位のステファニー・ギルモアが1位のカリッサ・ムーアを破りワールドタイトルを獲得した。圧倒的な強さを誇るカリッサだけに、2年連続でのワールドタイトルを獲得できないとなると、このイベント自体にも疑問が湧く。もちろんキャロラインのワールドタイトル獲得は素晴らしいものだが、せめて1勝を予めツアーNo.1の選手にカウントするなど何かしら優位にすることはできないものか…ウェブで観戦していてそこだけが大きく引っかかった。またこの結果、ウィメンズのCTランキングからのオリンピック出場はキャロライン・マークスに決定した。

来年に向け早くも期待が高まるチャンピオンシップツアー。五十嵐カノアのCT2勝目やファイナルズ進出などの活躍や日本へと移籍したコナー・オレアリーの活躍に期待しながらシーズンオフの動向もチェックしておきたい。

© WSL / Diz

ワールドタイトル獲得:フィリッペ・トレド(ブラジル)
2位:イーサン・ユーイング(オーストラリア)
3位:グリフィン・コラピント(アメリカ)
4位:ジョアオ・チアンカ(ブラジル)
5位:ジャック・ロビンソン(オーストラリア)

ウィメンズ
ワールドタイトル獲得:キャロライン・マークス(アメリカ)
2位:カリッサ・ムーア(ハワイ)
3位:タイラー・ライト(オーストラリア)
4位:ケイトリン・シマーズ(アメリカ)
5位:モリー・ピックラム(オーストラリア)

2023 Rip Curl WSL Finals Women’s Results: 
Women’s Title Match, Heat 2: キャロライン・マークス(アメリカ)14.60 DEF. カリッサ・ムーア(ハワイ)13.53
Women’s Title Match, Heat 1: キャロライン・マークス(アメリカ) 17.10 DEF.カリッサ・ムーア(ハワイ) 14.97
Women’s Match 3: キャロライン・マークス(アメリカ)17.40 DEF. タイラー・ライト(オーストラリア) 13.70
Women’s Match 2: キャロライン・マークス(アメリカ)11.67 DEF. ケイトリン・シマーズ(アメリカ)10.36
Women’s Match 1:  ケイトリン・シマーズ(アメリカ)15.17 DEF. モリー・ピックラム(オーストラリア)12.172023 Rip Curl WSL Finals Men’s Results: 
Men’s Title Match, Heat 2:フィリッペ・トレド(ブラジル) 14.27 DEF. イーサン・ユーイング(オーストラリア) 12.37
Men’s Title Match, Heat 1: フィリッペ・トレド(ブラジル) 17.97 DEF. イーサン・ユーイング(オーストラリア)) 17.23
Men’s Match 3: イーサン・ユーイング(オーストラリア) 17.10 DEF. グリフィン・コラピント(アメリカ) 15.96
Men’s Match 2: イーサン・ユーイング(オーストラリア)17.60 DEF. ジョアオ・チアンカ 14.57
Men’s Match 1: ジョアオ・チアンカ 15.33 DEF. ジャック・ロビンソン(オーストラリア)11.87