QS1500優勝の鈴木仁と彼が信頼するロックダンス・シェイパー添田知博のショートインタビュー

鈴木仁(すずきじん)●2001年3月7日生まれ。神奈川県小田原市出身、在住。幼少の頃から頭角を現し、エアーやクラシカルスポットで育まれたチューブライディングスキルが高い。今年の湘南オープンQS1500でプロ初優勝を飾り勢いにのる。料理も得意な18歳の好青年。YOUTUBEでチャンネル株式会社ちゃいちゃいをサーファー仲間で立ち上げるなど、コンペティション以外にも活躍している。
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ロックダンス

先日開催されたWSL QS1,500 Murasaki Shonan Openを制覇した鈴木仁。嬉しいプロ初優勝を飾った彼と、彼が信頼するロックダンス・シェイパーの添田知博氏にショートインタビュー。理想のボードを求め、時にはデザインへの思いをぶつけ合い、mm単位で調整し、二人三脚で優勝を獲得した姿があった。

サーフィンライフ(以下、SL) こんにちは今日はよろしくお願いします。初優勝おめでとう。プロで初優勝して変わったことは何かある?

鈴木仁(以下、仁) 少し時間は経ちましたけど、まだ実感はあまりないかもしれないです笑。でも、周りの見る目が少し変わった気がします。自分の中でもきっと自信にはなっていると思いますね。

SL 賞金は何かに使ったのかな?18歳には大金だよね。

 まだ使っていないですけど、使い道は決まっています。今回の勝利で、ランキングが少し上げられたので、これから海外のQSを転戦する遠征費として使いたいと思っています。

SL 仁プロの事を知らない人もいると思うから、出身、サーフィンを始めたキッカケ、年齢などを教えてもらってもいいかな?

 出身は神奈川県の小田原市です。始めたキッカケは父親がサーフィンをしていて、ただ単に楽しいからやってみろって言われて始めました。年齢は6歳ぐらいだったと思います。

SL それからのめり込んだんだね。初めてチューブを抜けられた年齢は?その時どう感じた??

仁 記憶が定かじゃないですけれど10歳ぐらいだったと思います。言葉にならないほど、凄く気持ち良くうれしかったのを覚えています。

SL 姉弟でプロサーファーだよね?お互いにプッシュしあったり、指摘しあったりすることはあるのかな?

 昔はありましたけど、今はあんまりないですね。今でも一緒にJPSAなどは転戦はしています。
(仁プロの姉は、同じくプロとして活躍する鈴木姫七プロ。後ろでインタビューを聞いていた皆から「兄弟で指摘しあうとケンカになるよな」と的を得た言葉が聞こえる)

SL 得意なアクション、好きな波はどういう波?

 エアー系が一番得意なアクションです。好きな波は・・・掘れた波、とにかくグリングリンに掘れた波が好きですね。

SL ライバルや憧れのサーファー、サーフィンの師匠はいる?

 ライバルっていうよりも同世代に上手い奴がたくさんいるので、負けないようにしたいと思います。憧れのサーファーは特にいなくて、師匠というか始めたキッカケをくれた父親ですかね。サーフィンに取り組む姿勢とかも教えてもらいました。

SL チームスポーツと違いサーフィンは個人競技、だから1人しか勝者はいないよね。1回も勝てないまま選手生活を終える人の方が多い。プロになり勝てない時期、どうやってモチベーションを保ったの?と言ってもまだまだ若いけれど。

 正直言って落ち込むことも沢山ありました。けど、知博さんもそうですけれど、周りの人がアドバイスをくれたり支えてくれて、やっぱり試合に臨む以上勝たなくてはいけないんですけど、例え1コケしてもいい所まで勝ちあがれたとしても楽しんでやろう、と次に向けてサーフィンをすることを心がけてました。

SL コンペティターに一番重要なサーフボードについて聞かせてください。どんなタイプのボードが好き?

仁 ボリュームがある、厚みがあるのは好きではなくて、ノーズもテールも細身でロッカーも強いボードが好きです。今はトライフィンしか乗らないですね。

SL 忘れられないマジックボードは今まであった?

仁 毎回、毎回、出来てくるボードのフィーリングがどんどん良くなっているので、今乗っているボードがマジックボードです。

SL ボードは何本くらい所有しているの?

仁 何本かあるんですけど、最近大きくボードコンセプトを替えているので、メインは試合に臨む2本ですかね。

SL シェイパーとのリレーションはどうしてるのかな?要望とかをガンガン言う方??

仁 前は言い辛さとかあって、言うことに迷いとかありましたけど、今は要望をちゃんと伝えています。何十本も作れるわけではないので大切に作りたいと思ってから、徐々に伝えられるようになったと思います。

SL 最後に仁君を知っている人にも知らない人にも今後の抱負や自分のサーフィンで見て欲しいところをお願いします。

仁 今年フル参戦しているJPSAの方はグランドチャンピオンを獲得したいです。QSの方は、優勝して1500ptを得られたので、ランキング100位以内を目指していきたいと思っています。

 

©ソエダサーフボードジャパン

続いてシェイパーの添田知博さんにインタビューSL 色々な種類のサーフボードを削られていますが、間違いなくプロのコンペティター向けのサーフボードが一番難しいですよね??

添田知博(以下、T.S)そうですね、全部難しいですけどやっぱりコンペ用のボードはF1マシンみたいな物だと思うので。勝負の世界で使うサーフボードですからね。まずコンピューターシェイプなので、データを1本1本作っていきます。

SL シェイプマシンを使っても全部ストレスフリーではないですよね。どんな難しさがありますか?

T.S マシンカットされたブランクスは、1本1本仕上げていく際に微調整を施します。マシンって言ってもブランクスの違い、ソフトの違い、マシンの違いやオペレーターの違いで、どうしてもデータに狂いが出ます。マシンもパーフェクトじゃないので。

SL データファイルがひとつ肝になる部分ですよね。どんなことにインスパイアされ、どんな感じで作っているのでしょうか?

T.S データを作る時から、そのサーファーをイメージして、それに合わせた音楽とかを聞く時もありますね。
仁だったら、メタリカの音楽を聴きながら攻めるような、ぶっ壊すようなイメージでデータ作る時もあれば、時間帯にもよりますけど朝早く静寂のなかでコーヒーを飲みながら作る時もあります。夜だったら酒を飲みながらデータを作ってって時もありますよ。過激になりすぎて、それで失敗したする時もあるけど 笑。

一般のカスタマー向けにはこれはできないですからね。あくまでもチームライダー向けのテストボードだからできる笑。でも、微細なことで変わってしまうボードだからこそ、大胆にいかなきゃいけない時もあるんですよね。以前住んでいたカリフォルニアに出張した時なんかにデータを作ると違うイメージが湧くこともあるし。これはパソコンでデータを作るから出来ることだと思います。それがシェイプデータを作る時に面白い所かな。

SL 仁プロのボード、サーフボードはどんなリレーションでデータの作成、シェイプをしているのでしょうか??

T.S いろんなプロサーファーの中でも仁は細かく要望を伝えてきます。でも、それでデータがバラバラにされちゃう時もあるんですよね。全部のフィードバックを入れ込んじゃうと。
ここは違うな、というところはお互いあると思うんですけど、それをできるだけ擦り合わせつつも、言うこと聞いてデザインするだけじゃ意味がないので、だから全部は聞かない笑。仁は特にボリューム、余計な厚みを嫌うので、めちゃくちゃ繊細にデザインしなきゃいけないです。0.5MM1MM単位で言ってくるので。難しいけどでもそこが面白い所でもあります。

SL 添田知博さんのボードを使用してプロサーファーが優勝したのは初めてですよね??プレイヤーとしてではなく、違った喜びがありますか?

T.S いぁ〜めちゃくちゃ嬉しかったですよ。アマチュアでは優勝したライダーもいるし、プロコンテストで準優勝とかはありましたけど、やっぱり格別ですね。優勝した当日はめちゃくちゃ喜びました。でも、次の日からは1回優勝しただけだし、これで終わりじゃ困るから気持ちを切り替えましたね。仁にも言いましたけど。シェイパーとしてプレッシャーもさらに出てきたっていうのが正直なところかな。もっとやらないとヤバイなという、これからがスタートですよね。

ライダーと二人三脚で栄冠を手にしてもこれがスタートだと言い切る添田知博。ショートインタビューで感じたのはライダーとシェイパーのリレーションシップが深いということ。飽くなき探究心で今後も様々なマジックボードを世に送り出してくれるだろう。

シェイパーだけでなく、マスターワークスのファクトリーメンバーもハイクオリティなサーフボードを支えている。職人集団のクラフトマンシップも仁プロを始めチームライダーや、我々ユーザーに欠かせないものだ。

優勝ボード
ロックダンス
T.SOEDA カスタム シェイプ
CORE ブランクスPU フォーム(グリーン) x PE (ノーマル樹脂) ラミネート
5’6″ 1/2 x 18 1/4″ x 2 1/8″ スカッシュテール(21.4L)

添田知博(そえだともひろ)●1978年8月25日生まれ。神奈川県平塚市出身、在住。40年以上の歴史を誇るソエダサーフボードの2代目。ボードメーカーを切り盛りしながら忙しく働く傍らシェイパーとしても活躍。独学で覚えたシェイプデータファイルの作成スキルと、幼少の頃から一流シェイパーとの関わりや一流のボード、ファクトリーマンとの関わりがありボードを見る目は研ぎ澄まされている。


撮影:熊野淳司 インタビュアー:スタッフ鈴木