村上舜 オリジナルインタビュー中編<2>

Photo: スタッフ鈴木

昨年の9月に行われた宮崎でのISA WSGで村上舜が見せた活躍は神がかっていた。宣言通りにケリー・スレーターに勝利し、アジア最高位も獲得したのは周知の通り。中編ではそんな緊迫したサーフィンゲームスの模様を振り返る。(インタビューは2019年の11 月上旬に行ったものです)

WSG最終日の前夜は 緊張で眠れませんでした
集中力がないと村上は先に述べたが、ここ一番の爆発力は他の日本人選手を凌駕するものがある。日本代表の切符を昨年の5月に行われた第一回ジャパンオープンを制して掴み取り、ISAワールドサーフィンゲームスでは2年連続でファイナルに残り4位に入っている。特に昨年9月に宮崎で開催された大会では、オリンピックのアジア枠が掛かったヒートでインドネシアの和井田理央とマッチアップすると、村上が殊勲の勝利を収め、日本の出場枠を確保した。
この大会は、前年に結果を出してもらったチャンスでもあるからモノにしなきゃいけないって。ただ、CTの選手がたくさん参加していたじゃないですか。そこで自分は戦えるのかって。絶対に勝てると自分に言い聞かせていましたけど、信じ切れずにいたんです
そしてオリンピックの出場枠が かかった大事な大会、オーディエ ンスからの期待が村上の背中にのしかかる。これまでに経験したことのないプレッシャーだった。
まわりには言わなかったけど、かなりナーバスでした。正直、出たくないと思ったぐらい。応援してくれるのは嬉しいんだけど、声をかけられるたびにどんどん重くなって……

重圧のピークは、ともにチーム 日本として戦ってきた五十嵐カノアと大原洋人が敗退してしまい、 村上が最後のひとりとなったとき。和井田との戦いを控えたファイナルデイの前日だった。
あまりアジア枠のことを考えて なかったんですけど、SNSとかを見ると俺と理央のことで盛り上 がっていて、負けたらヤバいのかなって。ミーティングでも、それまでプレッシャーを掛けるようなことを言わなかったチーム関係者が『舜、ここはオリンピック選考に大事だから勝ってくれ』って。ウソだろって思ったし、その晩は正直眠れませんでしたね

CTの選手はうまかったけど やれる自信はつきました
大会最終日、決戦の舞台はオンショアが吹く頭から頭半というハ ードコンディション。多くの観衆が見守るなか、村上は「これならば勝てる」と踏んでいた。
カギは先にヒートをリードすること。序盤でハイポイントを出して理央にプレッシャーを掛ける作戦でした。オンショアはあまり好きじゃないけど地元でダンパーの波はずっとやってきたし、独特の掘れたセクションは得意だったので、それこそワンターンでスコアを出すこともできた。仮にコンディションが良かったら、そう簡単に勝てなかったと思います
ここいちばんで自分を救ってくれたのは、幼いときから慣れ親しんできた地元・吉浜の波だった。 ヒート後、和井田は出場枠を逃したことから悔しさのあまり仲間に囲まれると肩を震わせ慟哭した。 一方、安堵の表情でビーチにあがってきた村上は、ギャラリーの大歓声に包まれる。その眼には、こみ上げてくるものが光っていた。
やばかったですよね。プレッシャ ーはきつかったけど、最後はそれが力になりました。たぶん応援がなかったらあそこまで頑張れなかったと思うし、こんなに人に感謝をしたのは初めてのことでした
その後、村上はグランドファイナルへと駒を進め、イタロ・フェレイラ、コロヘ・アンディーノ、 ガブリエル・メディナとマッチアップするが、 トップクラスの厚い壁に行く手を阻まれた。
レベルが違いましたね。ただ、いい経験ができたし、やり方次第では十分に勝負できると手応えを感じました。持ち味であるスピードや切れをさらに磨くことができれば大丈夫ですよ
現在、村上は日本代表が内定している。しかしカノアともう1人の代表選手は今年のISA WSGを経て決定される。その大会で村上以外の日本人選手が上位5名に入れば、その選手が代表に選ばれる。
他の選手が俺よりいい結果を出して欲しくないとは思わないんですよね。もしその人がオリンピックに出場するなら応援しますよ」
先日、エルサルバドルで5月9日〜17日の日程で開催することが発表された2020年ISAワールドサーフィンゲームスにも波乗りジャパンとして参加することが内定している村上舜。WSL QSの活躍とともに、WSGでの活躍も期待したい。

村上舜●むらかみしゅん/1997年、神奈川県生まれ。プロサーファー。ホームスポットは吉浜。父親の影響から小学2 年生の頃にサーフィンを始める。10歳でコンテストに初出場。2011年にNSA「オールジャパン サーフィン グランド チャンピオンゲームス」のメンズオープンクラスで優勝するなどアマチュアシーンを席巻しプロへ転向。’14 年から本格的に海外の試合を転戦。’18年、’19年と「 ISAワールドサーフィンゲームス」で4位となる。


そして彼はWSL QSの2020年の緒戦で勝利を収めた。それも今まで勝ったことがないQS5,000という大きなステージで。まだまだCTへクオリファイする道は険しく長いが2020年東京五輪への出場とともにクオリファイの可能性を感じてしまうほどの魅力が彼のサーフィンにはつまっている。


取材・文=石塚 隆
サーフィンライフ 2020年1月号(12月10日発売号を一部再編集して掲載)

村上舜がWSL QS5,000 Corona Open Chaina hosted by Wanningで優勝!

 

話題のサーファー、村上舜、松岡慧斗らが出演する「 MAD DAWG(MADG)」のリミテッド・リリース・パーティが行われた。