コンペシーンで輝きを放つ村上舜。インタビュー第3弾は、彼が尊敬する人物について、そして命をかけても本当にやりたいことをお届けする。(インタビューは2019年の11 月上旬に行ったものです)アンディ・アイアンズやブルース・アイアンズを尊敬するのは知られた話しだが、彼が本当に尊敬する人を教えてくれた。そこには壮大なビジョンがある。
尊敬する人物は「松岡慧斗くんですよ」。 昨年の3月、冬の間にオアフ島・ノースショアで撮影された映像からベストを決める『オニール・ウ ェイブ・オブ・ザ・ウインター』 を日本人として初めて勝ち取った ビッグウェイバーの名を挙げると、村上の瞳は輝いた。慧斗はさらに2019 SURFER AWARDSでTHE BEST BARREL AWARDSにも輝いた。
「実は一昨年から慧斗くんと一緒に動いていて、日本で誰も乗ったことのない波を開拓しているんです。トラックが入るようなでかいチューブをメイクしたいし、命を落とすリクスもある波だけど、ギリギリの挑戦をしたときって自分でも感じられるくらい成長できるんですよ。もう、すごい楽しいですね。そういったライディングを写真に撮って雑誌のカバーを飾ったり、映像に残してその年に活躍したサーファーを表彰する「サーファーアワード」の映像部門にノミネートされるとか、自分としては世界のサーフシーンにおいて、 ひとりのサーファーとしての価値を高めていきたいんで」
未開のビッグウェイブを探し当 てチャージする。どこかサーフィン黄金時代を想起させる夢――村上がオリンピックの先に見据えて いる世界はそこにある。 プロサーファーの多くがCT参戦を夢見るなか、村上の描く夢はプリミティブであり、クールに異彩を放つ。オリンピックは夢実現の足掛かりに最高のプロモーションの場であり、村上にとって〝手段〞に過ぎないというわけだ。村上の心のなかには、世界のまだ見ぬビッグウェイブがうねりを上げている。
そんな彼の思い描く作品が昨年限定リリースされた「MAD DAWG」だ。ぜひ、こちらもチェックしてほしい。
村上舜●むらかみしゅん/1997年、神奈川県生まれ。プロサーファー。ホームスポットは吉浜。父親の影響から小学2 年生の頃にサーフィンを始める。10歳でコンテストに初出場。2011年にNSA「オールジャパン サーフィン グランド チャンピオンゲームス」のメンズオープンクラスで優勝するなどアマチュアシーンを席巻しプロへ転向。’14 年から本格的に海外の試合を転戦。’18年、’19年と「 ISAワールドサーフィンゲームス」で4位となる。
そして彼はWSL QSの2020年の緒戦で勝利を収めた。それも今まで勝ったことがないQS5,000という大きなステージで。まだまだCTへクオリファイする道は険しく長いが2020年東京五輪への出場とともにクオリファイの可能性を感じてしまうほどの魅力が彼のサーフィンにはつまっている。
撮影=高橋賢勇
取材・文=石塚 隆
サーフィンライフ 2020年1月号(12月10日発売号を一部再編集して掲載)
話題のサーファー、村上舜、松岡慧斗らが出演する「 MAD DAWG(MADG)」のリミテッド・リリース・パーティが行われた。