村上舜 オリジナルインタビュー 前編<1>

東京オリンピックのサーフィン競技に日本から 2 名が出られるのは 、昨年宮崎での WSG(ワールドサーフィンゲームス) で村上舜が和井田理央を退けたことによる。 直後に試合で欧州へ渡るなど多忙の日々を送るなか、2019年の11 月上旬のある日、雲ひとつない快晴の吉浜で落ち合うと、 村上は胸の内に潜ませる、 熱い夢を語り始めた。

周囲の注目度は高まっても 求めるものは変わらない
プロサーファーにとってオリン ピックはどんな位置づけなのか。 村上舜は、しばらく考えを巡らせ、口を開くと言い切った。
自分の価値を高める場所ですね
他競技の選手たちからすればオリンピックは4年に一度の檜舞台であり、毎年開催される世界選手権よりもその価値は高く、自身の競技人生の集大成や終着点と捉える者が多い。それは〝オリンピック至上主義〞と言ってもいい。 だが、来年の東京オリンピックで初めて正式種目となるサーフィンに関し、選手たちの意識は曖昧模糊としている。トップを目指す選手たちからすれば最高峰はのWSLのチャンピオンシップツア ー(CT )であり、そこで戦うことが選手として成功を意味するだけに、初開催となるオリンピックをイメージするのは難しいのだろう。とはいえ、一般の人たちの4年に一度のスポーツの祭典に対する関心は高い。メディアでの露出度も含め、これまでのサーフィン界では考えられないほどの注目を浴 びるようになってきている。
それはすごく感じますね。インタビューとか増えてきましたし
条件付きながら、日本代表選手に内定している村上は、周囲の変化を確実に感じとっている。
ただ、自分がやっていることは変わらないんです。いい波があったら、それを追いかけるだけ
格好つけているわけではなく、どこまでも泰然自若とした口調。
純粋にサーフィンが好きだし、 そこは忘れちゃいけない。本当のことを言えば、試合はまったく楽しいとは思わないんですよ」 村上は正直に心情を語る。
競技は若いうちしかできない仕事だと思って割り切っています。 ただ、オリンピックに関してはタイミングがいいというか、もし出場できることができたら、その後、自分のやりたいことができやすくなるのかなって。そのために頑張っているという感じです」

2020年の結果次第では、 競技から退くかもしれない
生まれも育ちも神奈川県の湯河原町。ホームブレイクは吉浜だ。 7歳のとき父親の影響でサーフィンを始め、以来地元の『ウエイビー サーフショップ』でお世話になりながら選手生活を過ごしている。10歳からコンテストに出場し、数年でNSAのタイトルを獲得し頭角を現した村上は、プロとなり2013年から海外のQSに参戦。国内プロツアーのでは2015年から新島で3年連続で優勝をするなど日本のサーフシーンでその存在感を示してきた。抜群のスピードとアグレッシブでキレのあるサーフィンはスケールを感じさせ、また冬場はノースショアのパイプラインに通い詰めるなど、精力的な活動をしている。
ただ、日本のトップ選手であるものの、過去のリザルトをひも解けばWSL QSランキングの最高位は92位、JPSAでは7位(ともに 2016年)となっている。優勝する大会がある一方で、アベレー ジの低さが気になるところだ。
自分のサーフィンは悪くないと思っているんですよ。ただ、集中力はないのかもしれない。まあ、自分がやりたいことが勝ってしまって、(試合で勝つことの)優先度みたいなのが低いのかなって
サーファーとしての本能が、競技という枠組みを超えてしまう。
甘さはあるのかもしれませんね。 だから決めていることがあるんです。もし来年(インタビューは昨年行ったため2020年のこと)、真剣にやって結果が出なかったら競技を辞めようと思っています。ダラダラやるのだけは絶対に嫌なので
村上はオリンピックイヤーに競技者としてのすべてを賭ける。

村上舜●むらかみしゅん/1997年、神奈川県生まれ。プロサーファー。ホームスポットは吉浜。父親の影響から小学2 年生の頃にサーフィンを始める。10歳でコンテストに初出場。2011年にNSA「オールジャパン サーフィン グランド チャンピオンゲームス」のメンズオープンクラスで優勝するなどアマチュアシーンを席巻しプロへ転向。’14 年から本格的に海外の試合を転戦。’18年、’19年と「 ISAワールドサーフィンゲームス」で4位となる。


そして彼はWSL QSの2020年の緒戦で勝利を収めた。それも今まで勝ったことがないQS5,000という大きなステージで。まだまだCTへクオリファイする道は険しく長いが2020年東京五輪への出場とともにクオリファイの可能性を感じてしまうほどの魅力が彼のサーフィンにはつまっている。


撮影=高橋賢勇
取材・文=石塚 隆
サーフィンライフ 2020年1月号(12月10日発売号を一部再編集して掲載

村上舜がWSL QS5,000 Corona Open Chaina hosted by Wanningで優勝!

話題のサーファー、村上舜、松岡慧斗らが出演する「 MAD DAWG(MADG)」のリミテッド・リリース・パーティが行われた。

村上舜 オリジナルインタビュー中編<2>

村上舜 インタビュー後編<3>