サーフトリップ先として定番のバリ。インド洋からのうねりをダイレクトに受けるバリ島は極上波の宝庫。今回はメインとなるサーフエリアを大きく4つに分けて紹介するので、バリへお越しの際の参考にしてほしい。

1.サヌール エリア
クラシカルなバリが色濃いエリア
これからの季節は風次第で波質が大きく変わるサヌールエルアはバリ島の東側に位置し、11 月~ 3 月末までの雨季がベストシーズン。数多くのサーフポイントが点在し、レギュラーの波が多いことも特徴だ。有名なのはハイアットリーフ、サヌールビーチ、スランガン、クラマスなど。近年の大きなサーフニュースにはスランガンのビーチまでの陸路が封鎖され、船でアクセスしなければならなくなったことがあげられる。一方、サヌールの町並みやビーチの風景は昔とさほど変わらない。クラシカルなバリが色濃い(=ローカリズムが濃い)とも言え、それはサーフシーンも同じである。このエリアはローカルが大切にしているポイントが多いため、ビジターはサーフガイドとともに海に入るのがベターだ。

ライトのファンウェイブを求めるならサヌールエリア。写真は一番人気のハイアットリーフ。

海沿いには徐々にモダン旋風が。昨年ついにサヌール初のビーチクラブ「アートテル」がオープン。

アウターリーフへの船着場の周辺は今もローカルワルンが大盛況。ノスタルジーを憶える風景。
2.ブキット半島 エリア
世界基準の波でサーフしたいなら
ウルワツ、パダンパダン、ビンギン。切り立った崖の下に押し寄せる世界的にも有名なリーフブレイクはいずれも基本はエキスパート向け。サイズアップしたときの迫力ある波と凄腕サーファーの競演は見るだけで感動を覚えることだろう。初・中級者がブキットエリアでサーフィンするならば7月~ 8月のピークシーズンを避けた4月、5月、9月頃か、比較的波が穏やかでゲッティングアウトもしやすいバランガンやドリームランドをチョイスするのがオススメだ。崖下は人智の及ばぬ聖地としてあるがままの自然を残すが、崖上はその波や海、サンセットの絶景を求める人々が増えたことで様変わりを見せ始めている。クリフトップにはバーやビーチクラブがつくられ、今ではサーファー以上に多くの観光客が訪れる。

ジェリー・ロペスもローカルのワヤン・ゴブレックも「ウルワツの波は変わらない」という。

昔はサーファーしかいなかったブキットエリアも今やクタ、チャングーに次ぐ一大観光地に。

手つかずの荘厳な自然。そこに在る波を求めて今日もサーファーたちは崖を降り、海に出る。
3.クタ・スミニャック エリア
最新のバリが楽しめる流行発信地
エアポートリーフ、クタリーフといった中・上級者を満足させるアウターリーフブレイクから、初心者の練習に最適なハーフウェイ、パドマなどのビーチブレイクまで、バラエティに富んだ波を有するクタエリア。こちらもバリ島の西側で、チャングーやウルワツと同様、乾季がシーズンになる。今も昔もクタが観光の中心地であることに変わりはないが、昔ながらのお土産物屋やワルンが並ぶクタに対し、海沿いに最先端のビーチクラブ、ストリートには洗練されたセレクトショップやレストランが並ぶスミニャックのほうが最近は人気。ただしスミニャック周辺のビーチはあまり波は良くないので、遊びはスミニャック、サーフィンはクタ周辺と、行動に合わせてポイントをチョイスするほうが良いだろう。

ビーチブレイクでさえ上質なのがバリのすごいところ。クタはレンタルやスクールも充実だ。

スミニャックエリアはビーチクラブ最前線。人気の「ポテトヘッド」は自然との共生がテーマ。

今もパラソルで埋め尽くされるクタビーチ。クーラーボックスから出される飲み物が懐かしい。
4.チャングーエリア
バリと欧米の文化の交差点
バリ島の西側に位置するブワラ~ペレレナンまでのエリアは、風がオフショアになる3 月終わり~ 10 月までの乾季がベストシーズンだ。初心者向けのブラワ、バトゥボロン、中・上級者にはエコビーチとペレレナンがあり、オールレベルのサーファーを受け入れる。さらにビーチクラブの登場によりファミリーサーフィンなども快適になった。かつてはのどかな田園地帯だったチャングーは今、その波と自然に惹かれてヨーロピアンやオージーの移住者が急増。お洒落ヴィラやヴィーガンカフェなどが続々とオープンする注目のエリアでもある。バリ島の野生美に、エコ&サスティナブルを軸とする欧米の最先端意識が溶け合うのが今のチャングー。「デウス・エクス・マキナ」周辺に、そのムーヴメントは色濃く見て取れる。

近距離にポイントがまとまっているチャングーエリア。その日の波次第で好きなピークを選べる。

バリ島の自然文化を大切にした発展が今の潮流。自然派ビーチクラブやカフェもその象徴だ。

昔を知る人はいう。「この辺は田んぼしかなかった」。海から少し入れば今もその風景は残る。
[2019年5月号掲載の記事を再構成]