サーフィン史最大のライバル、ケリーvsアンディ 2003パイプマスターズ・ファイナルの真実

“ツアーはハッピーキャンプじゃない、ワールドチャンピオンを賭けた戦いの場。強烈なライバル関係はあって然るべきなんだよ” by マーク・リチャーズ〜Kelly Slater「Letting GO]より

サーフィンライフに加入した2年目の冬、どうしても一度ナマでパイプマスターズを見たかったので、かなり強引な理由をつけて 笑 取材に行かせてもらいました。そこで、サーフィン史に残るヒートが見れるとも知らずに…。

2003年の「パイプマスターズ・ファイナル」ケリー・スレーターとアンディ・アイアンズ、勝った方がワールドチャンプという、否が応でも痺れる試合。とにかく会場が異様な雰囲気だったのを覚えています。キャラ的にいうとケリーがヒローでアンディがヒール。でもその日は違ってました。会場全体がハワイアンヒローのアンディをプッシュアップ、しかも誰もがファイナルでの両雄の戦いを望んでいるようでした。さすが役者の二人は、観衆の望み通りファイナルまで駒を進めます。結果からいうとアンディが優勝しワールドチャンピオンに。当然パイプマスターの称号を手に入れ、さらにトリプルクラウンまでも獲得。まさにキャリアの絶頂を迎えた瞬間でした。

【2003 ASP RANKING】
1.ANDY IRONS
2.KELLY SLATER
3.TAJ BURROW
4.MICK FANNING
5.JOEL PARKINSON
6.KIEREN PERROW
7.TAYLOR KNOX
8.MICHAEL LOWE
9.CORY LOPEZ
10.DEAN MORRISON
今見ると物凄いメンバー!

このヒートにはいろいろな裏話があって、ファイナルデーの前日にアンディがステイしていた家で一人きりになったのを見計らってケリーがわざと訪問、またファイナルヒートの直前にアンディの耳もとで何か囁くなどの心理戦をかけていたとか(その後ケリーは”お前の事が大好きだよ”的な事を言ったと証言していますが、アンディは、はっきり聞こえなかったようです)、同じビラボンのチームメイトであるパーコ(ジョエル・パーキンソン)にケリーをブロックするよう指令が出ていたとか、クラック(ヒビ)の入ったボードのお陰で、意図せずストール(減速)し、ディープバレルをメイクできたとか、、、とにかくドラマやエピソードがテンコ盛りでした。

そんな中で最も記憶に残っているのがヒート後。大観衆に迎え入れられながら、肩に担がれビーチを凱旋するアンディといつまでも海から上がろうとしないケリー。ケリーはバックドア(パイプラインの逆側)とオフ・ザ・ウォールの間で敗北を忘れたいためだったんでしょう、烈火のごとく激しいフリーサーフィンをしていました。15分位経った頃でしょうか、やや暗くなった中、ケリーが見せた超特大のロデオフリップが今でも目に焼きついています。翌2004年もアンディがワールドチャンピオンを獲得しますが、その後、ケリーはコンペシーンに本格復帰を果たし、2005年以降現在までに実に5度のワールドチャンプに輝いています。この偉業の裏には自他共に認めるライバルに喫した、最大の敗北があったのはいうまでもありません。
【ASP WORLD CHAMP】
2002 ANDY IRONS
2003 ANDY IRONS
2004 ANDY IRONS
2005 KELLY SLATER
2006 KELLY SLATER

TEXT:サーフィンライフ Yasuyoshi”YAPPPODRA” Ogawa