近年最大級の盛り上がりを見せたISAワールドサーフィンゲームス。宮崎で感じたギャラリーの熱量。

熱狂のビーチではストーミーコンディションでもこのギャラリーが。スゴイ熱量で、大会を盛り上げてくれていた。

近年、日本で行われるサーフィン・コンテストにおいて圧倒的な盛り上がりを見せたISAワールドサーフィンゲームス。10月10日発売の11月号でも7Pに渡り掲載されているので、ぜひご覧ください。
サーフィンゲームスの開催中はほとんど晴天に恵まれたが、1日だけ他の日の小雨と違いストーミーな風と土砂降りだった日があった。

凄まじかった宮崎のギャラリーの熱量
それでもギャラリーの皆さんは帰らず、むしろその数が増えていきヒートに見入っていた。取材していて感じたのは、関東圏の人間にとってあの雨と風は台風並みに感じたこと笑。雨具も役に立たず、防水バッグも浸水していた状況だった。私の地元である湘南であの雨、風ならばあんなに人は集まらなかったかもしれない。たとえ強豪選手(CTツアラー)の参加、キング、ケリー・スレーターの参戦があったとしてもだ。
もちろん観戦していたのは地元の方だけでなく、わざわざサーフィンゲームスを見に来た方もいたと思うが、即刻車や建物に避難するレベルの雨風の妨害!?があっても、あの熱量がサーフィンコンテストにあったことに驚き、素直に嬉しく感動した。

宮崎のサーフィンゲームスが盛り上がった理由は他にいくつもあるだろうが個人的に感じたのは以下の事柄だ。まず、宮崎空港と木崎浜が役15分ほどの距離と近いこと、こんなに空港とサーフスポットが近くアクセス抜群なところはそうそうないだろう。これにより関西や関東からまたは九州の方々もアクセスが容易だった。(もし、宮崎で開催されていなかったならば、イタロ・フェレイラはヒートに間に合わず、リパーチャージ(敗者復活)にまわっていて、ヒート数を倍近くこなさないとファイナルには到達できず優勝は難しかったはずだ)。
そして何よりもビーチの広さと駐車場などの設備面が整っていたことがあげられると思う。宮崎はプロ野球球団の春季キャンプの時期は、7球団ほどがキャンプを実施する。それだけの球団が時期は多少ずれてもキャンプできるだけの宿泊施設などの設備も整っているということになる。なかでも木崎浜はプロ野球球団で超人気球団の読売巨人軍がキャンプをすることでも有名で、兎にも角にもキャパが広い。これは観戦に来る方にとっては非常に重要だったはずだ。これだけの規模の駐車場や宿泊施設を備える場所は宮崎以外には思いつかない。そういったハード面でも宮崎・木崎浜は優れていた。

この熱量を今後に繋げていければ、大きな道が開かれる
今後、東京五輪でより一層の盛り上がりを見せるであろうサーフィン。その熱量を大きなサーフィンの大会、具体的には2005年を最後に行われていない、WSL CTの日本での開催に繋げていけるのが理想だと思う。一過性の盛り上がりにするのではなく、CT誘致へ行政やナショナルクライアントも巻き込んで実施できないものだろうか。
卓球を見ていて、フィギュアスケートを見ていて、マイナー競技と言っては失礼だが(私の知り合いに実際にプレイヤーとしてやっている方は1人もいないがテレビで観戦する者は多い)、全国ネットで放映され見事にメジャー化でき競技人口が徐々に増えている競技もある。逆に世界一の称号を得ても、世界一に勝利してもうまくその機会を利用できなければ沈んでいく。現在盛り上がりを見せているラグビーが、W杯後どのような道を歩んでいくのかが興味深い。例え競技者がいきなり増えなくとも、見る者が増えれば発展していく。それを見た子供逹が実際にプレーをするようになる可能性が高いからだ。

ヒート直後に疲れていても、サインを求めて長蛇の列がなくなるまでサインをする大原洋人。人柄の良さが出ている。

サーフィンはどうだろうか?さらに裾野を広げていくべきではないだろうか。継続的に盛り上がっていくべき、発展すべきスポーツであり、カルチャーではないだろうか。サーフィンはライフスタイルとも密着に繋がっており、それはサーファーズ・ハウス、サーファーズ・ビークル、サーファー・ファッションなどの名称があることからも明らかだと思う。

先に話した通り、日本で行われるCTは1戦もなく、QS10000(来年からチャレンジャーシリーズという名称になるハイエストQSコンテスト)の開催もない。行政、企業、サーフブランド、コアなサーフィンメディアが一体となりCTを誘致し、マスメディアを巻き込み圧倒的なギャラリー数で世界をあっと言わせれば毎年開催されるようになるはずだ。
サーフィンを観戦するということが一般的になり、人を集められるようになれば当然、お金も集まるようになる。結果、プロサーファーの待遇面の向上に繋がり、五十嵐カノアに続く日本人CTツアラーが出て来ると思う。また見るサーフィンが定着すれば子供がさらにサーフィンをするようになるはずだ。結果、競技人口が増え、CT入りを狙える選手が増加していくことになる。サーフィンがさらに盛り上がりプレイヤーが増えれば、ラインナップは混雑が予想される。それを望まない方々もいるだろうし、それは当然の意見かもしれない。でも、プレイヤーが増えれば(キッズやビギナー)、気軽にサーフィンを楽しめる商業用のウェイブプールも多数建設されるかもしれない。以前にはない具現化されたテクノロジーが今の時代にはあるのだ。

今大会で4位と日本人、アジア人として最上位だった村上舜。サーフィンの実力だけでなく、ファンサービス対応も◎。彼に憧れてサーフィンをするキッズも出てくるだろう。ヒートで疲れていても、村上舜、大原洋人、五十嵐カノアをはじめ男子も、アイドル並みの人気を誇る松田詩野、脇田紗良、前田マヒナの女子3名、「波乗りジャパン」はチーム全員が丁寧にサインや写真の求めに真摯に応じている姿が印象的だった。

2019年のWSL CTもQSもブラジリアンストームが吹き荒れている。でも、こういった最高峰の試合を開催して世界を肌で感じられれば、ジャパニーズストームが起きる日も遠くないと思う。そこに繋げられれば五輪初開催となるサーフィンが日本で行われたことによる、大いなるレガシーになるだろう。

ファイナルデーのギャラリーはビーチだけでなく、その上の整備されたエリアにも多数集まり、カメラに収めきれないほど


写真/文 スタッフ鈴木