ケリー・スレーター ショートインタビュー

今年の5月、11×ワールドチャンピオンのケリー・スレーターはバリにいた。理由は2つ。1つはCT(チャンピオン・シップツアー)のバリ戦に出場するため。そして、スイスの高級腕時計メーカー、ブライトリングと環境保護団体オーシャン・コンサーバンシーの合同ビーチクリーンアップイベントに参加するためだった。ケリーは地球環境に配慮したプロダクトを生み出し、海の環境保全を訴えることを掲げて、ステファニー・ギルモア、サリー・フィッツギボンズとともに、ブライトリングが結成した“サーファーズ・スクワッド”のメンバーとして名を連ねている。

試合前日に行われたビーチクリーンの後に直接話を聞く機会に恵まれたのだが、試合やサーフィンについての心持ちを聞いた

サーフィンライフ CTに戻ってきてどう?

ケリー「問題ないよ。でももちろんすごくリラックスしているわけじゃない。自分自身にプレッシャーもかけているけれど、2戦を戦い終えてよりリラックスできるようになった。そんなに大きな期待を持っていないけれど、自分なりに楽しみながらやるだけさ。ベストなサーフィンができるときはいつも、自分が楽しいと感じているときだからね

サーフィンライフ ずっと第一線で戦っているよね

ケリー「そうでありたい。今現在は、そのポジションにいられていないからね。頑張って先頭に立ちたいけれど、同時にリラックスしながらやりたいと思っているよ。フォーカスしながらリラックスする。それが成功の秘訣だよ

サーフィンライフ オリンピックは狙っている??

ケリー「可能であればね。あまり意識はしていないけれど、心の片隅には置いてある……。うーん、でも正直わからない。今はCTにフォーカスしている

サーフィンライフ サーフィンが上手になるための秘訣は

ケリー「まず第一に『サーフィンをやるしかない』。例えばレスリングであれば、マットにいる時間が長いほどに上手くなる。どれほど上手くなりたいかによるけれどね。プロになりたいのか、コンスタントに波に乗れるようになりたいのか、そこへの道のりは目指すゴールによるね

サーフィンライフ サーフィンはスポーツ、カルチャー、ライフスタイルいろんな顔がある。未来にはどうなると思う?

ケリー「スポーツとして、コンペティターとしてサーフィンをしているサーファーは、人口的には少ないよね。ときどき、何パーセントくらいの人がコンピートしているのかと考える。やはりそんなに多くはないはずさ。ライフスタイル、ファッションとしてサーフィンを楽しんでいる人の方が圧倒的に多い。これからもそんなサーファーが増えていくんじゃないかな

サーフィンライフ あなたは今後どのようにサーフィンをしていくの?

ケリー「長いこと選手として戦ってきたから、これからは楽しんでいきたいね

サーフィンライフ アウターノウン、スレーターデザイン、ブライトリングとのパートナーシップなど環境問題に積極的に取り組んでいるよね。世界中の海を見てきて、どのような危機感を感じている?

ケリー「言い表せないくらい、海全体が汚染されていると思っている。人がいないような遥か遠くの海まで。だから、僕らの社会全体が向かい合わなければいけないと思っている。今まで人間がやってきたことに関してくじけそうになるよ。ここまでくると、各国の政府が環境に対するルールをもっと厳しくする必要があると思う。とくにビジネスに対してね。個人がどんどん会社を作って、従業員とともに良い環境づくりに取り組むような政策を取っていかなければいけないと思う。そういう類のビジネスが発展していけば良いなと思っているよ。イーロン・マスクがアメリカでやっていることのように、世界を変えていくことが必要だと思っている。同時に、政府は今まで人々の“生活”には入り込んでこなかったけれど、僕らの生活は地球環境から切り離しては考えられないので、政治がより生活に関わってこなくてはいけないのかもしれない
サーフィンライフ 海に流れ着くプラスチックごみの問題も大きな話題になっているよね。
ケリー「例えばここバリではお土産用のココナッツがプラスチックバッグに包まれて売っている。理解しがたいよ。そういうことを変えていかなければいけない。みんなが考え方を変えて協力していけば、大きな変化をもたらすことができるはずだよ
ーフィンライフ 貴重な時間をありがとう。

 

ケリー・スレーター●1972年2月11日アメリカ・フロリダ州で生まれ。異次元のサーフィンで11×ワールドチャンピオンに輝くサーフィン界のキング。今なお現役で戦うトッププロサーファー。実業家としての顔も持ち、新次元のウェイブプールを開発したイノベーターでもある。エシカルなウェアブランド、アウターノウンのプロデューサーとしての顔も持ち、海洋環境問題などにも積極的に関わる


写真/ペドロ・ゴメス インタビュアー/高橋淳