スピーディなパドリングを行うためには、サーフボードと水面との抵抗をすくなくすることが大切。サーフボードがグラついてしまうと水面に波が発生してしまい、失速を招いてしまうのだ。ここでいうグラつきは大きく3つの種類に分けられる。それらの詳細と対処法を教えてもらおう。
教えてくれた人
伊藤慎一郎 教授
工学院大学工学部機械工学科の教授。スポーツ流体研究室にて、流体力学に関係するスポーツ(水泳、球技等)を科学している。代表的な研究に、理論面から最速のフォームを提案する水泳の泳ぎ方がある。
水面を波立たせない
伊藤教授はパドリングの失速につながる「抵抗力」について次のように説明する。
「一定速度でパドリングする場合、推進力と抵抗力は釣り合います。つまり大きな推進力で進めば、速度は増しますが、その分大きな抵抗力が加わってしまうのです」
水面を前進すれば必ず生まれてしまう抵抗力。それをいかに小さくするかが、速く疲れにくいパドリングの鍵となる。
「パドリング時の抵抗を少なくするには、水面を波立たせないようにすることが重要になります。サーフボードが横方向、前後、左右にグラつくことをどれだけ抑えられるかがポイントです」
3種類のグラつき方と、その対策とは?
1.横方向のグラつき
「水面に手を入れるとき親指からアプローチする」
「“ロール(Roll)”と呼ばれるグラつきです。ロールを抑えるコツは、手のひらを少し外向きにして親指から水面にアプローチすること。身体が左右にブレにくくなるため効果的です。後述のヨーを抑えることにもつながります」
2.前後のグラつき
「低い重心を保ちながら頭の位置を安定させる」
「ピッチ(Pitch)と呼ばれるグラつきです。ピッチを抑えるためには、低重心を保つことが有効です。視界を得ることと腕を回すことの妨げにならない程度に、頭を低く安定させると良いでしょう。この体勢はロールを抑えることにもつながります」
3.左右のグラつき
「パドリングする腕をサーフボードに寄せる」
「“ヨー(Yaw)”と呼ばれるグラつきです。推進力が中心に寄っているほどヨーを抑えられます。ですので、腕の動きに無理が出ない程度に、できるだけサーフボード付近の水をかくことが有効です」
[2019年7月号掲載の記事を再構成]
取材・文/高橋淳