見事QS6000で3位入賞  QS6000も控える4月上旬の稲葉玲王にショートインタビュー 

稲葉玲王 稲葉レオ

4/29日から5/5日までの日程でウェイティング期間が設けられていた日本最大級の国際大会WSL QS6000 CHIBA ICHINOMIYA OPEN、そして5/6日、5/7日の2日間で行われ、9月に行われるISA日本代表を争うJAPAN OPEN OF SURFING(選ばれし男女16名づつのみが参加、6日には平井大さんのライヴも開催)。この2試合はいずれも東京2020のサーフィン競技会場である千葉県一宮町・釣ヶ崎海岸で行われるビッグイベントだった。

そんな五輪会場の町、一宮町で生まれ育ちオリンピックの代表候補でもある稲葉玲王にショートインタビュー。普段はWSL CT入りを目指し、世界中で行われる下部シリーズのQS(クオリファイシリーズ)を転戦するレオ。なかなか自宅でホッとできる時間もないという彼に束の間の日本滞在中に話しを聞いた。

サーフィンライフ(以下、SL)
18/19シーズンのウィンターノースが終わり、束の間の日本滞在からブラジルでの2戦、そしてオーストラリアでの戦い、そしてポルトガルの2戦とここまでのところはどう??

稲葉玲王(以下、レオ)
ウィンターノースの時期、リップカールハウスにステイさせてもらったんですけど、ガブリエル・メディーナが本当に異次元のサーフィンをしていて、さらに進化していました。トップ・オブ・トップの姿を目の当たりにして刺激を受けましたね。あとは松岡慧斗君のあのダ・フイ シュートアウトのヤバイライディング(18/19 O’NEILL WAVE OF THE WINTERでトップに選ばれ日本人史上初の快挙)にも痺れました。
コンペティションではQS6000グレードでも良い所まで勝ちあがれるようになったのは自信が持てます。今のところQSランキングも良い位置にはつけていると思いますね。もう少しポルトガルでポイントを稼ぎたいという思いはありましたが…調子が良かっただけに残念です。

(インタビュー当時10位、CHIBA ICHINOMIYA OPEN後は5位とまだ序盤戦ながら日本人最高位&クオリファイ圏内)

SL:海外の転戦は肉体的にも、金銭面でも大変だよね。そのあたりはどう??
先日のブラジルのコンテストでは60時間の移動に牢獄のようなホテル、断水、雨漏りでベットも濡れ、停電、蚊の襲来と大変だったみたいだね。しかもリゾート地でご飯などの物価も高くて(物価が高いため滞在費節約で安いホテルに宿泊したそう)。https://ameblo.jp/reo-inaba/entry-12443497996.html

レオ

スポンサーの皆様からいただいている金額は全て注ぎ込んでいます。むしろ赤字になるくらいに。それでもCTへとクオリファイするためにはハイグレードな大会で勝つしかないので。
移動はやはりブラジル、アフリカなんかが大変なことが多いですね。ただ飛行時間もそうですが、トランジット、現地に着いてからの移動の方が大変なことが多いです。荷物はサーフボードを何本も持って行きますし、洋服やらウェットスーツやらでどうしてもかなりの荷物の量になります。でも、もう慣れましたよ笑 家族も色々とサポートしてくれています。
日本人も世界中の大会をフォローしています、もっとメディアの皆さんも応援して露出してください笑

SL:そうだよね、サーフィン専門誌としてもなかなか競技としてのサーフィンを追いかけられていない部分がある。自分が楽しむサーフィン以外にもサーフィンをもっと観戦する、見ても楽しむという文化を我々メディアがさらに訴求させていかなければいけないよね。実際観戦するのも楽しいもの。
今の選手は若くして日本の反対側のブラジルでの大会、ヨーロッパ、アフリカの大会など遠い地域への遠征も多い。そこに参戦するためには多くのお金が必要になる。サーフィンそしてプロサーファーの認知度をあげ、さらに注目されていけばスポンサーなども増えると思う。今は企業だけでなく、個人も個人アスリートを応援(スポンサー)する時代になってきている。そういった意味でもオリンピックは一般の人々への認知度アップとして良い機会になると考えているんだけど、そのあたりはどうかな??

レオ

サーフィンが日本中、世界中に注目され、それが地元での開催。夢のような話しで、尽力してくださった皆さんのためにも、もちろん家族、そして自分のためにも出てメダルが取りたいです。そのためには、まず代表入りするために自分を信じてやるだけですね。オリンピックやCTに入ることによって注目されて、僕達現役世代だけでなく、その下の世代(キッズ達)にも道が開けてくると思うんです。

(ISAサーフィンゲームス日本代表を争うJAPAN OPEN OF SURFINGはラウンド3で敗退、代表入りを逃した。9月のISA波乗りジャパン代表は男子、村上舜、五十嵐カノア、大原洋人に決定したが、2020年にも5月にISAのワールドサーフィンゲームスが予定されている。そこに選ばれ、結果を残せば代表入りの可能性も残されている)

SL:話しは変わるけれど、レオは幼い頃からハワイへと通っていて海外勢、特にハワイアンとも仲が良いじゃない?今年からCTにクオリファイしたセス・モニーツとかさ。そういった最高峰のサーファーを間近で見て、行動を共にして、日本でのQSとかの際はレオの家にステイしたりしていて、ひと昔前からすればスゴイことだよね??

レオ

セスはヤバイです。チューブ、エア、カーヴィング、ビッグウェイブとどれをとっても上手い。CTにクオリファイするだけでなく、もっと上を目指せるヤツです。自分も追いつきたいし、めちゃくちゃ刺激を受けてますよ。彼は日常生活もワイルドというか突拍子もないことを平気でやっちゃうんですよね。メンタルも強いです。

SL:世界を転戦している時も、やっぱり海外選手とのコネクションは心強い??

レオ

まだ車の免許を持っていない時などは、同じリップカールにスポンサードされている他国の選手の車に乗せてもらって試合会場から試合会場まで移動したり、ルームシェアしたりと戦友みたいな感じですかね。大会になればライバルでもあるんですけど。セスをはじめ仲の良いサーファーと一緒に行動したり、知らない土地なんかでは不安に思うことも当然あるし危険なことも多いですが、本当に海外のサーファーとの繋がりは心強いです。

SL:それで一宮の大会とかはレオとレオの家族がホストとして、選手を受け入れているんだね。壁にも沢山サーファーのサインがあるもんね。今年も多数の選手がレオの家に来そうだね。日本人選手では誰が仲が良いのかな??

レオ

日本人選手なら、村上舜プロなどとよくQSを廻っています。ポルトガルも一緒でした。気心も知れているし、やっぱりプロとしてあのサーフィンには刺激されますね。(稲葉玲王、村上舜、蓮、脇田泰地、都築百斗などとTEAM MOBB を結成している)あとは田中樹君にコーチを依頼しているので、樹君と転戦したりもします。

SL:地元で行われるQS6000 CHIBA ICHINOMIYA OPENの目標は??野暮な質問だよね、そりゃ優勝だよな。

レオ

はい、やるからには優勝を狙っています。ビッグリザルトを手に入れて、CTにクオリファイするための重要なポイントを手にしたいです。地元の波、やり慣れた波で力が入りすぎたり、考えすぎたりしてきましたが、やっと3回目の今大会でナチュラルに大会に向き合える気がしています。元CTサーファーやクオリファイを目指す強者が多数来日予定ですが、普段海外でやっているメンツです。自分のサーフィンをしっかりやり抜けば勝てると信じています。

SL:QSの千葉の大会は過去2年、優勝は海外勢。応援しているし、海外のサーファーにサムライ魂を見せてやってほしい。今日はありがとう。

レオ

ありがとうございました。応援よろしくお願いいたします。

SL:コンテスト自体、勝ち上がるのが相当に厳しい。グレードの高いQS6000,QS10000は選ばれし強者しか出れないうえに、150人近くの選手が出場しても勝者は当たり前だがひとりのみ。それが海外での戦いとなれば尚更、勝ち抜くのは困難を極める。レオはインタビューをしていても好青年。普通にどこにでもいるような青年だが自然体の眼差しとは違い、ヒート中のレオは実に眼光鋭く研ぎ澄まされている。もし、稲葉玲王のことを知らないサーファーがこの記事を見て少しでも興味を持ったら、ウェブ観戦でも現地観戦でも声をかけてあげてほしい。CTクオリファイ、その先にある日本代表を夢見て戦う若者にとって大きな力になるはずだ。

稲葉玲王 稲葉レオ
稲葉玲王●イナバレオ

1997年生まれ。プロサーファーである父の影響でサーフィンを始め、若干13歳にして日本サーフィン史上最年少でJPSAプロサーファーになる。現在は海外のコンテスト(QS)を中心に転戦し、エリートツアーと称される34名のみが参加出来るCT入りを目指している。また東京2020のサーフィン会場の一宮町で生まれ育ったこともあり東京2020サーフィン代表入りが期待される。一宮にあるDEEPSURFは彼の自宅でもあり彼の父、稲葉康宗さんが営む老舗サーフショップだ。
スポンサー●ROCKDANCE(TOKORO),RIPCURL,CREATURES,FUTURES.,SEXWAX,DEEPSURF,RONIN、他

インタビュー/スタッフ鈴木 カメラ/熊野淳司

WSL CTとは

最高峰のチャンピオンシップツアー(CTは世界中の精鋭34名[ワイルドカード含む]からなるツアー)の参加資格を得るためには、下部ツアーのクオリファイシリーズ(QS)のコンテストに出場してポイントを稼がなければならない。このポイント(自らの持つポイント上位5戦の合計)を基にランキングが算出される。シーズン終了後、QS世界ランキングで10位以内が現CTの下位選手10名との入れ替えとなり、翌年のCTに参加することができる。また、ランキングのトップ10に翌年もCT参加資格(CTランキングで22位までに入っている)を持つ選手が含まれている場合その人数分が繰り上げとなる。
ただ、フォーマットなどが変わる可能性もあるので、常に最新情報をチェックしておきたい。

 

自分よりセンスのいいサーファー #11 稲葉玲王