波を知る#1 ビーチブレイクとはどんな波?

サーフィンとは、波のエネルギーからスピードを得て、海を疾走すること。そのため、波の仕組みをよく知れば、より良いライディングが楽しめる。そこで、僕らが普段入ることの多いビーチブレイクを乗りこなす知識とヒントを、プロサーファーの浜瀬海に聞いてみよう。

 

いつもサーフィンしている“ビーチブレイク”はどんな波?


ビーチブレイク

ビーチブレイクとは海底が砂のサーフポイントのこと。その砂が積もることでできる〝サンドバー〞と呼ばれる地形の状況によって波質は常に変わっていく。基本的には波のパワーがあり過ぎずに乗りやすい波で、岩場(リーフ)のポイントに比べて安全だ。「波の斜面の緩い、小さいサイズのビーチブレイクではリラックスしてサーフィンが楽しめます。浮力のあるロングボードやファンボードを使えば、のんびり波に乗れて最高に気持ちいいですよね。そういうポイントでは、入っているメンバーもメローにサーフィンを楽しんでいたりするので、初心者の方にお薦めです」という浜瀬プロ。しかし、コンディションによっては、上級者を唸らせるブレイクが姿を見せることもある。「大きな波や、ハイパフォーマンス向きの掘れた波はレベルの高いショートボーダーが好みます。ビーチ特有の予測が難しいチューブは、規則的に巻いてくるリーフブレイクのチューブと違ってゲームのような面白さがあるんです

条件次第でさまざまな表情を見せるビーチブレイクは、どのようなレベルのサーファーでも飽きることなく楽しめる波なのだ。

海底の砂の動きと波の関係


ビーチブレイクは海底が砂となるため常に動いていて、その影響によって、波質も刻一刻と変化を見せる。ウネリや風の向きや強さ、潮の動きで波は大きく変わるのだ。

ビーチブレイク

波が崩れて岸へ向かった海水は、海底にあるサンドバーが深く沈み込んでいるところを通りながら沖へ戻っていく。この沖へと向かう流れを離岸流(リップカレント)という。

地形が急激に浅くなる場所で波は一気に掘れ上がりチューブを形成する。波頭(リップ)が海面にぶつかる場所インパクトゾーンと呼ばれ、波の力が集中して弾けるので要注意。

沖合い(アウトサイド)では大きな波が立つ。深い場所から緩やかに浅くなる海底にヒットしたウネリは、徐々に厚く崩れていく。サイズが大きければそれだけパワーも強い。

波と波の間にはどこかにリップカレントがあり、その流れに乗りパドルアウトするのがビーチブレイクのセオリー。流され過ぎた場合は抗わず、カレントの弱い場所へ逃げること。

緩やかに浅くなるビーチサイドでは、綺麗に割れる波が立つこともある。砂地なので、岸のギリギリまで波を乗り切っても安全なのは、ビーチブレイクの魅力のひとつだろう。

 

海底の地形によって波質は変わる

掘れた波

掘れた波
急激に浅くなる海底で割れる波は、一気に掘れ上がり波頭が巻く。その際にできる波の中の空洞は“チューブ”と呼ばれ、そこをくぐり抜けるのはサーフィンの醍醐味。波が大きなときはもちろん、小さくてもスピードに乗ったスリリングなライディングが可能だ。

厚い波

厚い波
水深の深いところからやってくるウネリが、次第に浅くなる海底に当たっていくと、面が広く、斜度の緩やかな厚い波がブレイクする。遠浅の海での小さなウネリの際には、初心者にも優しいコンディションとなり、クルージングするようなサーフィンが楽しめる。


海底の砂による波の動きや特徴がわかったら、その時の波や海の状況を見極めて沖に出なくてはならない。次回、沖にパドルアウトする際のポイントとは?

 

教えてくれた人

プロサーサーファー 浜瀬 海
はませかい●1997年、神奈川県生まれ。2017年にJPSAロングボードグランドチャンピオンを獲得した、ショートボードのプロとしても活躍する稀代のオールラウンダー。先日開催されたJPSAロングボード特別戦と第2 戦を連続優勝するという快挙を成し遂げたばかり。

写真/吉岡昌彦、ユースケ、高橋賢勇、中浦“JET”章、ペドロ・ゴメス、ショーン・サラリラ  イラスト/樋口篤郎 取材・文/高橋 淳